崩れる通信

「崩れる本棚」創作コンテンツ用のブログです。

崩れる通信 No.-4

久遠寺久兵について知っておきたい二つのこと(その一)

インタラクティブ

ウサギノヴィッチ

おめでとう!

2015/8/1 21:00 from小笠原亜樹

「おめでとう! 文芸誌の最終選考に残ったんだって? 編集者さんから電話があったんでしょ? おめでとう! 電話したんだけど、寝てるのかな? 今日はバイト明けなんだっけ? お疲れさま。早く会いたいな。今度そっちに行けるのは来週の週末になっちゃうかも。ごめんね。家の用事で今週末は埋まっちゃって、行けそうにないんだ。本当にごめん。電話なら今くらいの時間帯なら大丈夫だからね。早く会いたいです。じゃあね。」

 

Re:こんばんは

 

2015/8/2 1:44 from片桐哲生

久遠寺くん、こんばんは。昨日、小耳に挟んだんだけど、君が文芸誌の最終選考に残ったんだって? いや、驚いたよ。たまたま、編集の人と打ち合わせしていて、その後にお酒飲んでたんだけど、『今回はウチとしてはだれが賞を取ってもおかしくない作品が残ったんです』って言ってて、以前聞いてた君の名前を冗談半分に言ったら、本当に残ってたらしく酔いが醒めてしまったよ。それくらいに驚いた。これは本当はいけないことなんだけど、君のことを推しといたよ。って言っても名もなき下読みの作家が推したところで、選考委員のところまで届くかわからないけどね。でも、二千くらいの中から最後の六作に残ったのは自信に思っていいと思うよ。受賞しても落選しても今度飲もうじゃないか。久しぶりに君に会いたいと思ったよ。取り急ぎこれで失礼させてもらうよ。ではでは。」

 

作品の選考について

2015/8/4 18:32 from紀田仁志

「君の同人誌に提出した作品読ませてもらいました。実験的な作品だから、それを解いてしまうと跡形もなくなってしまって、残念だと思います。君は自信作だと言っていたけど、僕は過去作品のほうが好きだな。君は反論するかもしれない。だけど、僕はサークルのリーダーとしての立場として言わせてもらえば、同人誌のある程度の質を担保しなければならないから、今回の作品は見送らせてもらうよ。これは作品とは関係ないことかもしれないが、最近君の作品に出てくる女性像がなんか柔らかくなったというか、具体的になってきたと思う。なにかあったのか? まぁ、君のことだからだれかモデルがいるのかもしれない。それとも成長しているってことなのかな? どっちにせよ、君の文章が成長しているってことには変わりないからこのまま小説に精進してほしいな。じゃあ、次回に期待しているよ。じゃあ。」

 

今バイト終わったー

2015/8/4 23:15 from小笠原亜樹

「ごめんね、バイトしてて遅くなっちゃって。紀田さんが私たちのことを疑ってるのかな? どっちにせよ、私はいいんだけど。なんでそんなに付き合ってるってこと隠したがるの? それに同人誌サークルの人は最終選考に残ったって言ってないんでしょ? あなたの秘密主義は魅力的だけど、ここまで隠していることが逆に仇になりそうで私は怖いです。なんか隠しておきたい理由があるの? 今度電話したときに話そうね。」

 

無題

2015/8/7 15:34 from 母

「最近暑くなってきたけど、体は大丈夫かい? 来週はお盆だからこっちに帰ってきたらどうだい? アルバイトでいそがしいかもしれないけど、少しは将来のことについて話してみないかい? お前がこのまま一人な気がして私は心配です。一度でいいからそういう真剣な話をしないかい? お父さんに話せないことがあるんなら私に言うだけでもいいから、なんでもいいから連絡ください。夏風邪は一度ひくと治りにくいから気をつけてください。」

 

帰りの電車から

2015/8/8 21:46 from 小笠原亜樹

「今日は何の日か知っている? ヒゲの日なんだって? うけない? 面白くない? 口ひげが八の字になるから今日らしいよ。なんかこじつけだよね。日本って無駄に記念日みたいなのを作るよね。十月一日は眼鏡の日とか八月一日はおっぱいの日とかほんとくだらないよね。今日は楽しかったよ。久しぶりに久兵のうちでゆっくり過ごして楽しかった。フライパンでお好み焼き作ってて、フライ返しがないからパンケーキみたいにひっくり返そうと一生懸命になっている久兵の顔はかっこよかったよ。うっそぉ、お世辞だよ。それになんか面白かったし。でも、久兵がキャベツの千切りを私より細く切ってるのみて感動した。この人は自炊できる人だって思った。あたしは田舎の実家暮らしでたまにしか手伝いなんかしないから全然ダメだね。結婚したら(気がはやいか笑)お互い助け合って生活しようね。そろそろ日本一大きい大仏の前が見えてきたから、そろそろ地元の駅に着きます。今まで立ちっぱなしで疲れたよ。そうそう、新しい小説の話聞きたいな。ダメかな? またメールするね。」

 

告知

2015/8/10 19:47  from山田光太郎

「久しぶり。今回も告知のメールを送ります。今回は自分が大学時代から三年前まで所属していた劇団の復活公演です。『劇団Popholic復活公演 【シックス ミニッツ アゴウ】日時 八月二十二日 十四時〇六分 十九時〇六分 二十三日 十四時〇六分 十九時〇六分 劇場 アイピット目白』以上のようになってます。本番に近いので都合がつきにくいかもしれませんが、是非と来ていただきたいです。これは今年一番面白い公演になっていますのでよろしくお願いします!」

 

無題

2015/8/12 13:06 from 高梨先輩

「急で申し訳なんだが、今日、遅番で出てくれないか? 相方が風邪をひいて倒れたらしい。どうか頼む。他の日を休み取れるように調整するからお願いだ。」

 

ごめん

2015/8/12 20:20 from 紀田仁志

「気が変わった。今回の久遠寺の作品を同人誌に載せようと思う。たぶん、君は怒るかもしれない。この気分屋めと。そう言われてもしかたない。でも、僕を信じて欲しいことがある。だれかが落ちたわけじゃない。君の作品を読み返すうちに気が変わったんだ。君の作品は初見では伝わりづらいところがある。それは致命的かもしれない。それでも、同じテキストを読み込んでいくうちに段々と君の描きたい世界が伝わってくる。そのことを今回の作品を読んで改めて実感した。だから、この間のメールでは申し訳ないことを言ってしまった。それは許してくれ。すまん。次回の作品には取りかかっているのか? 久しぶりに話して誤解を解きたいと思っている。時間があるときにかけてくれ。」

 

無題

2015/8/13 14:00 from母

「家賃と生活費のお金をゆうちょ銀行に振込みました。今回はちょっと多めに振り込んであります。お父さんには内緒だよ。どうしても実家には帰って来れないのかい?」

 

今起きた!

2015/8/15 11:04 from小笠原亜樹

「遅くなってごめん。さっき起きて急いで準備して地元の駅までダッシュだよ。早く会いたいよ。また駅に着いたら連絡します。」

 

Re:今起きた!

2015/8/15 12:43 from小笠原亜樹

「駅着いたよ。お迎えに来て。」

 

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提案!

2015/8/19 22:11 from小笠原亜樹

「この前は楽しかったよ。暑い夏の日に水族館に行くのはいいね。涼しかった。なんか本当にカップルしてるなって思ったよ。なんかそんなこと言っちゃうとカップルじゃないみたいでごめんね。でも、本当に楽しかったんだ。イワシの群れを見て驚いた久兵の顔超ウケた。マジでビックリしてるんだもん。その後に、水族館のあるビルで夜景見たのも良かったよ。ありがとうね。あたしの為に下調べしてくれたんだよね。でさ、夏も終わりになっちゃうけど、海行かない? 泳がなくてもいいんだ。海が見たいの! 地元に海があるじゃないかって? そうじゃないの地元の海じゃなくて、一緒に海が見たいの。鎌倉行かない? 今度はあたしが企画するから。鎌倉からちょっと行ったところに腰越ってところがあってね、文学的にちょっとしたスポットがあるんだよ。それは行ってからの、お、た、の、し、み、だよ。じゃあ、詳しいことが決まったら電話するからねぇ。」

 

明日のお知らせ

2015/8/21 23:39 from山田光太郎

「こんばんは。明日、公演がある劇場までの道のりをお伝えします。目白駅を出てすぐ通りを渡る、そして左手に直進。下落合の交差点を少し過ぎた辺りに第一勧業信用組合があり、そこと富士薬局の間の道に入っていくとあります。ご予約は『久遠寺久兵様』の名前でご用意してありますので、受付の際にお申し付けください。それでは明日精一杯頑張るんでよろしくお願いします。」

 

気がついたことだが

2015/8/22 4:12 from片桐哲生

「昨日はどうも。まさか、劇場で久遠寺くんに会うとは思わなかった。いや、共通の知人なんだから会うことは当然可能性はあったんだが驚いたよ。ところで、君はあの芝居を見てからtwitterで『ゴダールを見る人は自殺しないタイプだ』とツイートしてたようだけど、俺が言ったのは、ゴダールを見たことあるやつが自殺するわけない、ということではないからね! ゴダール=難解=わけわからなく自殺する了見、という俗な考え方(使い古されたあるある)を批判したの。「勝手にしやがれ」を見て、犬のように死にたいと本当に自殺する人はいるかもしれないけど、そういう決めつけのような考え方にまで踏み込んだフォローを昨日の芝居ができていなかったことにつっこんだわけだ。と言うことで、俺は寝る。」

 

合コン

2015/8/24 13:06 from 高梨先輩

「仕事お疲れ。仕事中に言った合コンの話なんだけど、ぶっちゃけどう? 忙しい? 顔出すだけでもいいから来てくれよ。久遠寺みたいなタイプが欲しいんだよ。明日の夜七時に丸井の前で待ち合わせだからな。これは俺からの提案なんだけど、お前の飲み代持ってやるから来てくれよ。よろしく頼むな。」

 

Re:提案!

2015/8/25 23:24 from 小笠原亜樹

「最近、仕事で忙しいのかな? 連絡待ってます。」

 

昨日の超楽しかった!

2015/8/26 14:54 from佐久間愛

「おつかれぇ。昨日は超楽しかった。なんつぅか、気持ちよかった。えっ? どういうことだって? セックスがってこと! 言わせんなって。今度は二人で飲みに行こうね。じゃ。」

 

久遠寺

2015/8/27 15:09 from osamu_oda11@xxx.com

「拝啓、久遠寺様。文芸誌最終選考おめでとうございます。あなたのことをネット文芸誌から追いかけていたものです。あなたのtwitterにメールアドレスがあったのでメールいたします。文芸誌にあなたの名前が載ったときは自分のことのように喜びました。私はあなたの小説を認めてはいます。ただし、あなたの作品に一つだけ不満があります。その一つによって文学という神聖なものを愚弄しているように思えます。あなたの小説には読者に対して正直な態度をとっていないことが非常に残念でありません。あなたの作品は構造だけで物語を語っているだけで、その構造が空虚なものであるからです。最近のあなたの小説にはその傾向が顕著に出ているように思えます。いきなりメールでぶしつけなことを言ってしまいましたが、もし私のような名も知れぬ作家志望の者の意見を聞いていただけたら幸いです。それでは末筆ながら、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

織田理拝

追伸

今週あたりに文芸誌の最終選考があるはずですよね。あなたが受賞することを遠くから祈っています。」

 

どうしたの?

2015/8/28 0:14 from 小笠原亜樹

「ねぇ、どうしちゃったの? 連絡ください。今日は起きて待ってます。」

 

Re:会いたい

2015/8/28 0:36 from佐久間愛

「ごめん、バイトでくたくたなんだ。また今度にして。」

 

連絡ください

2015/8/29 12:15 from 小笠原亜樹

「今日バイトが終わったら、久兵の家に行きます。心配です。」

 

ごめんなさい

2015/8/30 18:26 from 小笠原亜樹

「昨日は、突然家に押し掛けちゃってごめんなさい。でも、久兵に会えてよかった。文芸誌は残念だったけど、久兵ならいつかは取れるよ。大丈夫、私がついているから。私も久兵を見習って頑張って書かなきゃなって思ったよ。今回の同人誌には出せなかったけど、次回は出そうと思うんだ。久兵と連絡取れないって紀田さんにも言っちゃったし、迷惑かけちゃったしね。じゃあね、来週また会おうね。」

 

教えてよ

2015/8/31 23:59 from紀田仁志

「久しぶりに声がきけてよかったよ。安心した。小笠原や周りのみんなが連絡取れないって言ってたからなにかあったんじゃないかと思ってたけど、よかった。僕の方も自分の仕事が片付いたよ、よかったよ。ホームページの更新作業。ダメだね、一人で編集長やって、一人で事務的な作業をするのは。だれかに手伝ってもらおうと思ってる。君にお願いしてるわけじゃないから安心してほしい。今、香川君に頼んでみて返事待ってるところだよ。あと、次回のテーマをどうしようか悩んでいるところだよ。今回は『虚構』だったから、次回は『時間』にしようかなと思う。もちろん、テーマに沿った作品じゃなくてもいいよ。でも、『時間』なんて小説の中では密接な関係にあるものだからどこかしらはテーマとリンクするんじゃないかな。ところでさ、さっきホームページ更新していて思ったんだけど、君の作品のことを考えていたんだけどさ。受信したメールだけで進行していくやつ。昔、自分に来た手紙だけで構成している内容の小説をどっかで読んだことあるんだよね。有名な作家だと思うんだけど、だれだか思い出せなくてモヤモヤしているよ。それと、今回のメールの中にフィクションとリアルはどれくらいの感じで混ざっているんだい? 全部フィクションなんてことはないだろう? 最後に今度飲みに行こう。返事待ってる。」

(了)